2019年1月16日水曜日

「キンベル美術館について」提出したレポート

(Google Search "Luis Kahn's Kimbell Art Museum")
(はじめに)
学生時代、宿題で書いたルイス・カーン設計のキンベル美術館のレポートが出てきたので捨てるのがもったいないのでブログに載せさせてもらいます。用紙をスキャンスナップでPDF化しコピペです。文字認識の精度に驚かされますが誤字脱字がありましたらすみません。当時は建築家ルイス・カーンの凄さをわかりませんでした。今は最も好きな建築家のひとりです。

「キンベル美術館について」

キンベル美術館

設計・施工:1966~1972

建築地:テキサス州フォートワース

設計:ルイス・カーン


■ルイス・カーン

1901年ロシアに生まれ、1905年アメリカに移住、後にペンシルバニア大学で建築の学士号を取得する。そこではパリのエコール・デ・ボザールで学んだポール・クレーが教鞭を取っており、19世紀後半以降のアメリカン・ポザールを受け継いでいた中でルイス・カーンは学んでいた。


■ルイス・カーンの建築の特徴

1)中心性を持つ部屋を集合させてつくる。<多極性>
2)建物全体によって部屋を統合する。<一極性>
3)ダッガの国会融事堂のように1)と2〕を併用する。
4)<近代建築と古典建築を融合させる>
(※原口秀昭著「20世紀の住宅」より)

■キンベル美術館の平面計画について

設計当初、平面ができてから、ヴォールトの屋根を考えたというより、ヴォールトの屋根が最初にあったと思われるので、平面の中に空間、構造の話も多少入ります。

8.5m×30mの対象性の強い矩形〔カマボコ)の単位を並べて建物全体を統合する、上の2)の構成。そのカマボコを縦(北から南に)に8列、横(西から東に)に6列並べ、縦の真ん中の列から2つ削って.の字型をつくり、西側の窪んだところをエントランスにする。また、西側の出っ張った2つの単位の部分をポーチとする。エントランスに入ると、右手にギャラリー、正面に図番館と、ショップ、左手に小ギャラリーとオーディトリウムが配されている。その中に大小8つのコートがある。(平面図参照)建物の外部から単位(カマボコ)を強調させるために単位と単位をわずかに離しているが、内部からは単位によって分断されているようには感じない。
外部と内部はコンクリートとトラバーチンによって、強く限定されている。

中庭に開けていて、内部でカッチリ完結している。

平面では、鋭角、鈍角、曲線、貫入などは使われていない。


■空間について

竹山実氏は空間について「空間は心の形だ」といっています。では、ルイス・カーんの心を彼の言葉から推測する事も大切だとおもうので、少し引用してみます。「私は今テキサスで美術館を設計しています。コンクリートで構築されたルームの光は、銀色の光を持つだろうと感じました。色あせる諸々の絵画やオブジェのためのルームは、限られた自然光しか与えられてはならない事は私も承知しています。その美術館の計画は、150フィートの長さと20フィート幅のサイコロイド・ヴォールトの連なりからできています。それぞれのヴォールトは空に開く細いスリットを持つルームを形成し、ヴォールトの内面には自然光を拡散させるように形成された反射板が取り付けられています。光はオブジェに直射する事はなく、そのルームに銀色の輝きを与え、しかも一日の時間の推移を知るという安らいだ感情を与えるでしょう。展示室の上方にスリットによるスカイライトに加えて、ヴォールトを直角に切り取りました。つまりコートの体位法です。それらは空に開かれ、計算された寸法と性格が与えられ、そのプロポーション、その植栽、あるいは表面や水面への空の反射が与えるであろう光の種類にしたがって、それらのコートは、グリーンコート、イエローコート、プルーコートと名付けられました。」
ヴオールトの天井は高さが人が最も落ち着く5mに近く、またトップライトからの採光で、外に視線を逃すことなく、作品に集中できる落ち着いた空間になっているのではないか。
一見閉鎖的になりそうな内部を救っているのは、3つの中庭であろう。トラバ-チィンで仕上げられた中庭は非日常的な高級感のある光を醜し出しているのではないか。やはりこの美術館の一番の特徴は、近代主義と古典主義が融合された空間だろう。
金属性のサッシは冷たさを醸し出しているが、木製の椅子などのファーニチャーがその分暖か味を出している。


■構造について

槙文彦氏による考察では、建物のエレメントと、その組み立て方はあくまでカーン的に級密に独創的になされているようです。
「例えば、ヴォールトを支える桁行きの梁は柱の外側と同一面にのせられている。当然梁幅は柱幅よりも少ないために約半分余ってしまう。もしも普通の架構であるならば、天井面はフラットであるから柱の上部は裾でおさえられる。ヴォールトではそうはいかない。オープン・ヴォールトでは柱の頂点の半分は内側できれてしまっているが、そこには一見偏心による非合理性を越えた建築のディテールを持つ美を感じさせる。つまり柱のわずかなあまりの部分は、ギリシア建築の柱の柱頭のキャピタルの突出部が作り出す陰影と同じ効果を感じさせる。また、内部のヴォールトではこのあまりの幅はそのまま三日月型の透明なスリットを受けている。」

(補足:2014)
普遍性への挑戦、時間(現在過去未来)への挑戦、数学的美しさと建築的美しさへの探求がすごい。

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