2019年4月4日木曜日

Review「某様邸新築及び改築計画」








<用途>専用住宅
<家族構成>夫婦
<構造・構法>在来軸組構法・鉄筋コンクリート布基礎
<基礎>地上1階
<敷地面積>400㎡
<地域・地区>第2種住居専用地域
<防火地域>指定なし
<設計期間>1997.5〜1997.11
<工事期間>1997.12〜1998.4
<外部仕上げ>モルタル/板張り/サイディング張り
<内部仕上げ>モルタル/板張り/ビニールクロス貼り
<設備システム>・空調:温水床暖房・パネルヒーティング
        ・換気:換気扇
        ・給排水
<状況>山形県鶴岡市の住宅地に建つ二人暮らしの住宅(子供は成人し他県で暮らしている)。敷地は東側に7.5mの前面道路、北側、南側、西側にそれぞれ2階建ての住宅が建っている。建築主との打ち合わせを重ねる過程で要望が整理されてきた。「自然環境に強く、あまり周辺と調和しない家にはしたくない。本を読んだり本を収納する書斎のような部屋を作る。車庫を用意し車一台分の駐車スペースをとる。来客用の予備室をつるく。収納スペースを多くとる。」
<自然環境>
庄内地方の月間日照時間の月別平均値
1月:53時間
2月:76時間
3月:149時間
4月:190時間
5月:222時間
6月:193時間
7月:204時間
8月:216時間
9月:171時間
10月:159時間
11月:98時間
12月:57時間
年合計:1787時間


庄内地方の月別平均降水量
1月:149mm
2月:113mm
3月:108mm
4月:105mm
5月:98mm
6月:131mm
7月:172mm
8月:209mm
9月:212mm
10月:164mm
11月:214mm
12月:208mm
年合計:1883mm


庄内地方の月別平均気温(℃)
1月:1.2
2月:1.1
3月:3.9
4月:9.7
5月:14.7
6月:19.3
7月:22.9
8月:24.9
9月:20.2
10月:14.3
11月:8.7
12月:4.2


庄内地方の月別平均相対湿度(%)
1月:72
2月:72
3月:69
4月:69
5月:72
6月:78
7月:81
8月:80
9月:79
10月:74
11月:73
12月:72
<まとめ>
以上の統計は1951年から1980年までの平均値であり観測点も酒田であるから地理的な違いと時代的な違いが多少生じているだろう(温暖化のため冬の降水量は減って平均気温は上がっている筈)。しかし変わらないことは夏はあまり風がなく温度湿度共に高く、冬は風が強く降雪と共に吹雪が多い日本の中でも厳しい方に属する自然環境の中に敷地を有していることだ(春、秋も風が強い)。冬の降水量は一昔前から比べると大分少なくなったとはいえ、隣地との雪の問題が起こらないような屋根を計画しなければならない。

そしてなんといっても梅雨のない北海道などと違って梅雨の時期の不快指数は高い。防湿対策や風通しを十分考えなければならない。関東以南ほど暑くなく、北海道ほど寒さに厳しくないことから庄内地方の一般住宅は日本の標準的な住宅の構法を取り入れてるようだった。最近ペアガラス(複層ガラス)が普及し始めた。その前は局所的に高価な二重サッシを使用していたため住宅の中での室温のむらが大きく温かいと感じなかったようだ。家の中に外(廊下)と中(部屋)をつくってしまっている状態。近年は家全体を包み、熱が逃げないような断熱方法、暖房方法が重要視され始めている。外断熱工法、床暖房など。





<Plan1:配置>

居住棟と車庫棟の2つに分けて計画する。書斎をどちらに振り分けるか悩む。よりプライベートな時間を静かに楽しむなら車庫棟に、移動のしやすさなを考えたら居住棟にもってくる。静かな別荘のような家を計画したい。立派な門、広い玄関ホール、冠婚葬祭などで使われる座敷などをつくらない。

<Plan1:グリッド/スパン>
2.7m9尺のグリッドを敷地に載せなるべく既存の庭をいじらないように居住棟と車庫棟の領域を確保する。その間を通路でつなぐ。
<Plan1:庭>
今回の敷地では四方に緑があるため居住棟には中心生が生じるようだ。
<Plan1:寝室>
寝室は眠るだけの室と考える。通常寝室はプライベートな個室と考えて作られる。子供部屋であればテレビ、ミニコンポ、机椅子、本棚、ベッドを置くと6畳から8畳の広さが必要になる。しかし眠る以外のことを居間などでやることにすれば寝室のスペールは小さくて済む。寝室を小さくして隣接するクローゼット収納押入れを大きめにとる。また夫婦で着替え見せないよな配慮から収納を小部屋で行うようにする。帰ってからすぐに着替えられるように玄関、寝室、浴室、居間という導線も考える。
<Plan1:DK>
夕食のルートを考える。
・買い物に行く。
・買い物袋をもって帰宅。
・台所に向かう。
・その日に使うものを調理台へ、残りを冷蔵庫や食品庫へ入れる。
・調理に取り掛かる(洗う、切る、焼く、煮る、炒める等)
・食器を出し盛り付ける。
・食べる。
・後片付け(食器を洗ったり、ゴミを捨てたり)。
<Plan1:縁側>
見直されつつある外部と内部の中間要素。テラス、ベランダ、縁側などは住宅を数値以上に豊かなものにする。





<Plan2:配置プラン>
既存の庭をなるべくいじらないように敷地を4分割にして、そのうちの2つを建物に残った2つを庭にする。建物2つは同形として幾何学的美しさが出ればと思い対称性を用いた。
一方の棟に(1)車庫、(2)エントランスブリッジ、(3)入り口、(4)個室を配しもう一つの棟に(5)居間、茶の間、(6)台所食堂、(7)水回りトイレ・バスなどを持ってきた。問題は2つの棟をつなぐブリッジをどうもってくるか。隣地とどのくらい離して配置するかなど。
<Plan2:グリッド/スパン>
建物は2.7m(9尺)モジュールで構成される。2.7mは駐車場の間口として丁度よく、また個室としても丁度よく間口である。9尺間を2つ並べた5.4mは居間、茶の間などの広間に使うことができる。
<Plan2:庭>
<Plan2:寝室>
<Plan2:台所>
<Plan2:縁側>

この案の利点は
(1)各室から自分の家が見える(落ち着く)。
(2)各室から2方向に庭が見える(落ち着く)。
(3)同じモジュールを使うので施行性が高くなる。


<Plan3:配置プラン>
<Plan3:グリッド/スパン>
・中庭を囲むコの字型プラン。
・典型的な都市型住宅プランの王道。
・隣家が気にならなくて済む。
・屋根も片流れにすれば雪、雨の問題も起きにくくなる筈。
<Plan3:庭>
<Plan3:寝室>
<Plan3:DK>
<Plan3:縁側>

《現場周辺調査》
【敷地前面道路】
・旧7号線と大山街道を繋ぐ通りで車、人通りは多い。
・7mの幅員。
・近所には特徴的な建物、大型施設がない平均的な街並み
・街路樹はないが緑は多い方に感じる。
・二階建の住宅が並ぶ。
【敷地からの眺望】
・東方向に大きな庭があり眺めが良い。
・西側、南側、北側は眺望はあまりよくない。


【確認事項】
・車庫は1台分で大丈夫か。
・車庫の間口は2727mmで大丈夫か。
・物入れ、収納、食品庫、倉庫などについて(内容、サイズ、室数)。
・和室、洋室の割合。
・庭、エクステリアの計画について。
・台所のタイプ、サイズ、デザイン。


※以上、今から22年前の1997年就職一年目の自分のスケッチブックを書き出してみました〜(^o^)/